飽和脂肪酸摂取量がアルツハイマー病リスクと関連

食事中の脂肪摂取とアルツハイマー病との関連は、観察研究において議論の余地のある関係が示されており、その因果関係も不明である。中国・北京大学のYunqing Zhu氏らは、総脂肪、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の摂取がアルツハイマー病リスクに及ぼす影響を評価し、その因果関係を調査した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年10月11日号の報告。
UKバイオバンクとFinnGenコンソーシアムから得られたゲノムワイド関連研究(GWAS)の要約統計を用いて、2サンプルメンデルランダム化分析を実施した。UKバイオバンクの各種脂肪摂取の研究には、5万1,413例が含まれた。FinnGenコンソーシアムの遅発性アルツハイマー病(4,282例、対照群:30万7,112例)、すべてのアルツハイマー病(6,281例、対照群:30万9,154例)のデータを分析に含めた。さらに、炭水化物とタンパク質の摂取量とは無関係の影響を推定するため、多変量メンデルランダム化(MVMR)分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・総脂肪、飽和脂肪酸の摂取量の標準偏差当たりの遺伝的に予測される増加率は、遅発性アルツハイマー病で、それぞれ44%(オッズ比[OR]:1.44[95%信頼区間[CI]:1.03〜2.02])、38%(OR:1.38[95%CI:1.002〜1.90])高いこととの関連が認められた(p=0.049)。
・MVMR分析でも、この関連性は有意なままであった(総脂肪のOR:3.31[95%CI:1.74〜6.29]、飽和脂肪酸のOR:2.04[95%CI:1.16〜3.59])。
・MVMR分析では、総脂肪および飽和脂肪酸の摂取は、すべてのアルツハイマー病リスク上昇との関連が認められた(総脂肪のOR:2.09[95%CI:1.22〜3.57]、飽和脂肪酸のOR:1.60[95%CI:1.01〜2.52])。
・多価不飽和脂肪酸の摂取量は、遅発性アルツハイマー病およびすべてのアルツハイマー病との関連が認められなかった。
著者らは「食事中の総脂肪摂取、とくに飽和脂肪酸の摂取は、アルツハイマー病リスクに寄与し、その影響は他の栄養素とは無関係であることが示唆された。食事中の飽和脂肪酸摂取量を減らすことは、アルツハイマー病の予防戦略およびマネジメントに役立つであろう」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)
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